その手が暖かくて、優しくて
ここは生徒会で使用している小会議室
この日、風紀委員トップの清宮公正によって主要幹部が集められた。
「校則で学校内への持ち込みが禁止されているにも関わらず、禁止品を不正に所持している者が後を絶たない。特に菓子類の不法所持で摘発された生徒は今年度に入ってからだけでも8人に上る。何か対策はないか?」
招集したメンバーに熱く語る清宮に一人が挙手後、
「菓子類を所持していた者に尋問した結果、どうやら校内で禁止品を売りさばいている者がいるようです。やつらは元締めから末端の売人まで細かく役割分担をしており、なかなか組織の全体像や黒幕が掴めません。」

つまり「飴ちゃん密売ルート」があるということだ。

おそらく裏で全てを仕切っているのはEクラスの佐藤を中心とする不良グループ「龍神会」に違いない。

風紀委員会は、この龍神会を解散に追い込むべく、これまで様々な対策をうってきたが、なかなか龍神会本体の壊滅に至らない。清宮はなんとしても彼の在任中に、これを成し遂げたかった。
「とにかく、これまで通りに所持者や売人を確保のうえシンジケートの解明に全力を尽くそう」
清宮の言葉で会議は終了した。


その日の昼休み、中村瑞希は昼食もそこそこに、ぼんやりと考えにふけっていた。
(あー甘いものを食べたい…)
そのとき彼女がいる教室に備えつけられているテレビに放送部が制作した番組が映しだされた。

「激撮!風紀委員24時!」

「我々取材班は今日1日、金森風紀委員の活動に密着取材するべく随行していた。彼はまだ2年生ながら、そのするどい洞察力と観察力で『カミソリ金森』と仲間から呼ばれている。」

(なにこれ?ちょっと面白そう)
瑞希はテレビの画面に見入ってしまった。

「今日も金森は定例パトロールの最中だった。下校時間を迎え、多くの生徒たちが家路に向かうなか、彼の鋭い目は一人の女子生徒に注がれた。『よし!行こう!』金森は、その女子生徒に近づいて行く。」

(やだ!これアタシじゃない?!)

瑞希は驚いた。顔にモザイクがかけられていたが、あれは間違いなく自分だ。

「金森の鋭い嗅覚が不審者をとらえたのだ。現場に緊張が走る。
『すいません。風紀委員です。』

金森は穏やかな口調で、その女子生徒に声をかけた。
『なんか口のなかに入ってないですか?できれば口を開けて見せてほしいんだけど…』

そのとき、女子生徒に明らかな動揺が見てとれた。」

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