イジワル同居人は御曹司!?
「加藤課長ですか?」

ゆうぽんが尋ねる。

「ううん、今居候している先の同居人。加藤さんにはさっき連絡しておいた」

ふーん、とゆうぽんは聞いておいて興味なさそうに相づちを打つ。

タクシーを呼ぼうと再びスマートフォンの画面をタッチしたその時だった。

目の前の車寄せに見覚えのあるシルバーの車が停車する。

運転席からスラリと背の高い男性が降りてきて、傘もささずにこちらへ向かって歩いてくる。

「紗英!」

まさかの奏さんの登場で、ゆうぽんは綺麗に上がった睫毛をバサバサさせて何度も瞬きする。

「…どういうことですか?藤田さん」

どうして奏さんがここにいるんだ…?

私は手のひらで額を覆った。



車寄せに止められた奏さんの愛車の前で、車椅子からよろよろ立ち上がる。

「歩けるか?」

コルセットを腰に巻き付け、超スローモーションのアシモのような動きで移動する。

奏さんが私の腰に腕を回して、負担がかからないよう支えてくれた。

「あ、ありがとうございます」

ゆうぽんがドアを開けると、奏さんに寄りかかりながらゆっくり後部座席に乗り込む。
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