イジワル同居人は御曹司!?
私は寝そべったまま後部座席を占領した。

「おい、ギャル、家はどこだ？」

奏さんは助手席に座ったゆうぽんに尋ねる。

「武蔵小山です」

通りがかりだな、と言って奏さんはゆっくり車を発進させた。

「どうゆうことですか？羽瀬さんと藤田さんって付き合ってたんですか？」

ゆうぽんは奏さんにも怯まず単刀直入に切り込んできた。

「付き合ってない」

しかし奏さんは秒速で否定。

「妹の友達だから以前から知り合いだっただけだ」

「あ」と、ゆうぽんは声を上げる。

「まさか、藤田さんの言ってた謎の同居人って」

私と奏さんは肯定も否定もせずに黙りこむ。

ゆうぽんは一人納得したように頷く。

他人に興味がないのか、私達に配慮したのか、おそらく両方の理由でそれ以上踏み込んだ質問をしてくることはなかった。

途中からゆうぽんに道案内をしてもらい、自宅まで送り届ける。

「私まで送っていただいてありがとうございました。雨が降っていたので助かりました」

ゆうぽんはペコリと頭をさげる。

「おいギャル、今日の事は…」奏さんが何か言いかけると「青池です。いい加減覚えてください。羽瀬マネージャー」とゆうぽんに言い返されてしまった。
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