イジワル同居人は御曹司!?
「あの、雷で停電になっちゃって。懐中電灯は何処にあるかご存知ですか?」

「…知らない」

メガネは布団を被りゴロリと寝返りを打って私に背中を向ける。

再び耳栓を装着しようとするが「ちょっと!」

と言って手首を掴んで阻止する。

「随分冷たい手ぇしてんな」

そういえば恐怖に気をとられていたから気づかなかったが、寝巻きでフラフラしていたので随分身体が冷えていた。

「はい」

と言って奏さんは布団を持ち上げる。

「はい?」

思わず私はきき返す。

「いいよ、入って」

「あ、なんかすいませ…」

あまりに自然だったので、暖かそうな布団の中へうっかり入りそうになりハッとする。

「いやいや、そうじゃありません。私は懐中電灯を探しに来てですね」

「だからない」

「ないって…!どうすればいいんですか?!闇だし!雷滅茶苦茶鳴ってるし!」

私を援護するかの如く、空はゴロゴロ鳴り出す。

「なんか、うるさいな…」

奏さんは面倒くさそうに言うと、私の腕をグイッと引っ張る。

私は腰に圧をかけないよう、されるがままだ。

そのまま奏さんの布団の中へと引きずり込まれた。

「これで怖くないし、寒くない」

奏さんは抱き枕のように、長い腕で後ろから私を抱きすくめる。
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