イジワル同居人は御曹司!?
「それで、お兄さんが週末までに出ていけって言うんだよね。どうすればいいの?」

「メガネめ」歩はボソリと呟き忌々しげに舌打ちする。

「シャネルのバックを買っちゃって夏のボーナスも使い果たしちゃったよ…」

海外セレブの真似をして『自分へのご褒美』なんつって、清水の舞台から飛び降りる覚悟で人生初のシャネルを買った。

今思えばそんな大枚はたいてブランド品を買うほど私は頑張っていたのだろうかと甚だ疑問になる。

しかも火事で燃えたしな!

「せめて後半年…いや、3ケ月あれば敷金礼金位は用意出来ると思うの」

「わかったわ。兄に後で連絡して私の方から説得してみる」

でも…と言って、歩は小さく溜息をつく。

「ああ見えて、兄は結構手強いのよね」

いやいや、全く意外じゃない。手強いのは見たまんまである。

「だから、紗英の方からも引き続き兄を説得してみてくれる?」

「でもどうしたらあんなおっかない人を説得できるんだろ。なんか弱味とか知らないの?」

歩は顎に手を当てて暫し考え込んだ。

「兄は、超理論的、超合理的な人間だわ。だから紗英が一緒に住む事により自分に何かメリットが得られると思ったら同居を許可するかもしれない」

「メリット…ですか?」

私の問いに歩はこっくりと頷く。
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