イジワル同居人は御曹司!?
男性が求めるメリットといえばやはり…

「い、色仕掛け?」

歩は私の頭の天辺からつま先まで視線を巡らせて「失敗したら逆鱗に触れるわよ」と大真面目に言う。

それはそれで結構失礼だ。

しかし、あの冷血メガネが人並み以下の私のフェロモンで篭絡されるとは到底思えない。

「とりあえず、両サイドから兄を説得してみましょう」

「わ…わかった」

私と歩はガッチリ握手を交わした。


歩への報告が完了し、データマーケティング部に戻る。

デスクへ座るやいなや、早速もう一人の後輩山下が「ふじたさーん」と言って駆け寄ってきた。

「なによ」

また何か厄介事を持ち帰ってきたかと警戒の視線を向ける。

「そんなぁ睨まないでくださいよー」ヘラヘラと愛想笑いを浮かべる。

山下は現在28歳。結構いい歳だ。

色白でひょろりとしており、ハッキリ言って頼りない。

実家が会社を経営しているため、お金には余裕があるらしく、アイドルの追っかけに高級車が買えるくらいはつぎ込んでいるともっぱらの噂だ。

身近な独身セレブがこれだと思うと現実って世知辛い。
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