イジワル同居人は御曹司!?
「だけど課題は山積み。これから忙しくなりそうっすねー」

ゆうぽんは気だるそうに言うと、長い髪を掻きあげた。

「そうねえ」歩はおつまみの出し巻き卵をパクリと食べながら言う。

あれ、と言って、桜井が歩の左手薬指に視線を向けた。

そこにはダイヤモンドのリングがキラリと光っていた。

「羽瀬、結婚するのか?」

桜井は単刀直入に歩に尋ねる。

ああ、と言って歩は仄かに頬を赤く染めて左手を引っ込めた。

「まだ正式には決まってないんだけど、多分…」

「おいおいおい、彼氏がいたことすら聞いてないぞ」

「そんな事わざわざ言いふらさないでしょ!」

歩は顔を赤らめたまま唇を尖らせる。

「同期の中でも1、2位を争う美人が人妻になるのは寂しいけど、よかったな!おめでとう」

桜井はにっこり笑いながらグラスを差し出す。

ありがとう、と言って、歩は照れくさそうに微笑みながら、控えめに乾杯した。

「ちなみに、羽瀬さんと同期の中で美人の1,2位を争ってたのって誰ですか?」

ゆうぽんが余計なことを言う。

「そりゃこの状況じゃ藤田って言うしかないだろ!」

「どうせ栞でしょ」

見え透いたお世辞に私は鼻の頭に皺を寄せた。
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