イジワル同居人は御曹司!?
『自分に何かメリットが得られると思ったら同居を許可するかもしれない』

歩の助言が頭を過る。

メリット…とりあえず役に立てばいいってことだよね。

「夕飯を食べているんですけど」

「見れば解りますが」

おっつ…心が折れそうだ。

「良かったら一緒に食べませんか?」

押し付けがましくなく、さりげなさを装い誘ってみた。

とりあえず胃袋を掴んでみる、というのはどうだろう。

「結構です」

…これまたあえなく撃沈。

「ですよね」

私はしょんぼり肩を落としながら料理に箸をつける。

羽瀬兄は無言のままキッチンから出て行った。

張り詰めた空気が緩み、ホッと胸を撫で下ろす。

しかし、全く取りつく島がない。

「どうしたものか」

私は小さくため息をついた。
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