イジワル同居人は御曹司!?
頬に手を添えられると、美しい顔がゆっくり迫ってきた。

あれ…この感じって、もしかして、またご飯作ってっておねだりされちゃうパターン?

なぁんて想っているうちに、私の顔をかすめることなく今度はしっかりと唇を捕えていた。

思いもよらない事態に私は抵抗することすら忘れる。

奏さんの唇は暖かくてふんわり適度に柔らかい。

なんか、気持ちいいかも。

うっとりして私はそっと目を閉じる。

奏さんは何度か触れ合うだけの短いキスをすると、そっと唇を離す。

…あれ、もう終わりなのかな。

私は薄ら目を開くと鼻先にある茶色の瞳と視線がぶつかる。

「初めてのキスは、アルコールの味だ」

奏さんはクスリと微笑んだ。

なんか…それってあんまりだ。

「こ、これは2回目じゃないですか」

1回目は事故のような起きぬけのキスにすり替えようとする。

「やっぱり起きていたのか、たぬき女」

奏さんブニっと頬を抓られた。

「これらの行為はセクハラの類に該当するのではないでしょうか?」

私は頬をさすりながら遺憾の意を申し立てる。

「こんな時でもお前は理屈くさいな」

奏さんは鼻白んだようにスッと目を細めた。

「奏さんには言われたくない」私は間髪入れずに言い返す。
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