イジワル同居人は御曹司!?
「セクハラをしたら1回5万円の罰金に処せられるとすると、奏さんには既に10万円分の罰金を支払う義務があります」

「俺の年収を残業代込で時給に勘算すると一時間当たり10,625円だ。そしてお前の発表の為に要した時間は有に50時間を超えている。つまりは531,250円分はセクハラする権利がある、ということになる」

「な、なんですか!それ!変態じゃないですか」

私は恐ろしくなり後ずさる。

「だから言っただろ?俺は高いって」

しかし、逃がさない、と言わんばかりに奏さんはガッツリ私の腕を掴んだ。

ここでまさかの色仕掛けを強要されるとは。

「奏さんは…その、私にキスしたいんですか?」

私は恐る恐る尋ねる。

本当だったらもうちょっと甘い雰囲気になるはずだけど。

「権利があるからしてるだけ」

なんじゃ、そりゃ。

私が眉根を寄せ、解せない顔をしていると、奏さんは指先でスルリと顎を撫でる。

身体の芯がゾクリとした。

茶色い瞳に捕らわれると、蛇に睨まれた蛙…は嫌だから、仔兎のように私は動けなくなる。

奏さんは眼鏡を外すとテーブルの上にコトリと置いた。

ゆっくり顔を近づけると再び私の唇を塞ぐ。
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