イジワル同居人は御曹司!?
これでまた50,000円を返済。

私は頭の中でそろばんを弾く。

なんとも寂しいキスである。

しかし、先ほどの触れ合うようなライトなキスとは違い、奏さんのキスは徐々に深くなっていく。

これは…本格的なセクハラだ。

私は緊張のあまり奏さんのTシャツをギュっと握りしめると、長い腕で抱き寄せられた。

これで何度目だろう、奏さんに抱きしめられるのって。

情熱的なキスに脳が蕩けながらも、頭の隅でぼんやりそんなことを想ってみたりする。

一息着こうと、奏さんが唇を離すと、思わずTシャツを握る手に力がこもった。

「なんて顔してんだよ」

奏さんは目を細め、少し困ったように笑う。

だけどその目には情欲の色が浮かび、唇もテラリと濡れていて何とも色っぽい。

きっと私もそんな顔をしているに違いない。

「今日はこれくらいにしておこう」

奏さんは私の頬にキスをする。

なんだもう終わりか…

いや、別にそんな、全然残念なんかじゃないけどね。

「そんな残念がるなって」

「何言ってんのよ、えろめがね」

私が真っ赤な顔で悪態をつくと、奏さんはおかしそうに声を上げて笑う。
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