イジワル同居人は御曹司!?
「ふぁあ…」

盛大な溜息を吐きながら、鍋の中でグツグツと煮える牛すじカレーをボウっと見つめる。

かれこれ小一時間は煮込んでいるだろうか。

奏さんはジムに行った後、自室に篭り勉強だか仕事だか何やらしている。

そして私は朝から慌しく家事をこなす。

いつもと何ら変わらない週末。


だけど朝一番で顔を合わせた時は動揺を隠しきれなかった―――

私がリビングの掃除をしていると、いつもの如くメガネは昼前に姿を現した。

「お…はようございます」

第一声が裏返りそうになる。

「おはよ」

奏さんはいたって平常心。

一人で動揺しているのが馬鹿みたい。

「あ、あの!」

声もおかしなトーンになっている。

「なんだ?」

奏さんはソファーで新聞を広げながら、億劫そうに視線を向ける。

「昨日は酔っ払ってたので、ちゃんとお礼を言えなくてすみませんでした。今回経営会議で無事承認いただけたのは、奏さんのおかげです。ありがとうございました」

私はペコリと頭を下げる
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