イジワル同居人は御曹司!?
「いいよ、ご褒美は昨日充分いただいたから」

昨晩の情熱的なキスが頭を過る。

私はギャーと叫び出し、床をゴロゴロしたい衝動に駆られる。

「ご、ご満足いただいて何よりです」

「こちらこそ」

奏さんは私の思考を見透かしたようにニヤリと不敵な笑みを浮かべた―――


「エロメガネめ…」

朝の赤っ恥な一幕を思い出し、私はキュッと唇をかみしめた。

しかし、いい歳してあれほど動揺しているのも如何なものかと思う。

色恋沙汰の一線を退いていた痛切なブランクを感じる。

ダメだ…

やはり彼氏を作ろう。

いや、旦那を作ろう。

そうだ、婚活しよう…。

私のプライベートにおける超重要施策を胸に打ち立てたその時だった。

不意に玄関のチャイムが鳴る。

誰だろう、夕方なのに。

私はパタパタと小走りで玄関へと向かう。

ガチャリとドアを開けると1人の女性が立っていた。
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