イジワル同居人は御曹司!?
茶色いロングヘアに透けるような白い肌。

何処か儚げな印象を受ける美女だった。

顔から溢れ落ちそうな程大きな瞳がジッと私を見つめている。

「あの…?何かご用ですか?」

あまりに凝視されるもんだから、居心地が悪くなり声をかける。

「すみません」

女性はぺこりと頭を下げると茶色い髪がサラリと肩に落ちた。

「此方は羽瀬奏さんのお宅ではなかったでしょうか?」

鈴の音のような可愛らしい声で尋ねられると、思わず眉がピクリと痙攣する。

…またまた女の訪問者ですかい。

よく見れば、儚げな女性は食材のたっぷり入った買い物袋を持っている。

夕飯でも作りに来ようと思ったのだろうか。

その左手薬指にダイヤモンドリングがキラリと光った。

歩が嵌めていたようなデザインだ。

って事は…エ、エンゲージリング?!

私の視線に気づくと、女性は慌てて右手でリングを覆って隠した。

「ああ、奏さんですね、お待ちください」

「あ、あの…!」

女性が何か言いかけたが、私は聞こえないフリをして家の中へと戻る。
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