イジワル同居人は御曹司!?
「藤田も午後のWebサイト改修のミーティングに出るの？」桜井が尋ねる。

「一応その予定だけど」

「広報宣伝部からは俺が出るんだ」

桜井は口の端を上げてキュートな笑顔を向ける。

やった！

思わず心の中でガッツポーズを作る。

目鼻立ちの整った甘いマスクに柔らかな物腰。桜井は女性社員から大変人気がある。

同期なので、ちょくちょく誘いあってはみんなで飲みに行く間柄だ。

まぁ、私はそれ以上に発展したいって思ってるんだけどね。

女の子のように端正な桜井の横顔にチラリと視線を向けると目が合った。

「じゃ、また後でな」

私は返事の代わりに、はにかみながら頷いた。

ああ…これだけでモチベーションアップ。仕事頑張ろう

火事で家計は文字通り火の車だしね。

歩はニヤリと意味深な笑みを浮かべる。思わず私は赤くなった。

「頑張るのよ、紗英」

何だか含みのある言い方だ。胸のうちを見透かされているようで落ち着かない。

「ありがと、急ぐから先行くね」

誤魔化すように私は慌て席を立った。
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