イジワル同居人は御曹司!?
「経営会議で役員達を説得することも、藤田の行動力がなかったら絶対実現しなかった」

それも私が考えたことじゃない。

しかも、車の修理代54,000円の為にやったこと、って言ったら桜井は呆れるよな。

「俺、この会社に入って初めて同僚に負けたって思った。しかも女に」

桜井の整った横顔をチラリと見ると、口元は綻ばせているものの、目は笑ってない。

「仕事だもん。勝ち負け、とかじゃないでしょ」

私は返答に困ってラーメンをグルグルかき混ぜる。

なぁんてな、と言って桜井はこちらを向いてニッコリ笑う。

いつもの笑顔に戻ってホッとしてしまった。

「まぁ、藤田は今まで俺の周りにいた女の子とは全然違うってことだよ」

それって、私は女の子として認められていないって事なのだろうか…。

「ブンブン振り回されて、刺激的で、一緒にいるとドキドキする」

桜井は小首を傾げ、くるりとした目で私の顔を覗きこんだ。

うーわー、こっちの方が断然ドキドキしとるわー!

私は動揺してグラスをつかみビールを一気飲みした。
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