イジワル同居人は御曹司!?
「ああ、そうだね」

私が同意すると、桜井は驚いたように目を見開く。

「休んでるより駅まで歩いた方が酔いざましになるかな」

「…そういう意味じゃないんだけど」

どういう意味なんだろう。

私が首を傾げると桜井は「ま、いっか」と言って苦笑いを浮かべた。

しかし、蛇エキスは想像以上に私の身体に効いているようで、ヒールで歩くと足元がふらつく。

「送るよ」

「…でも」桜井の家は反対方向のハズ。

「どうせ支払いは法人カードだから心配すんな」

桜井はタクシーを拾って強制的に私を押し込んだ。

「今藤田って何処に住んでるの?確か前の家は火事で…」

と言いかけだが、配慮したのか言葉を濁す。

「いま緑ヶ丘に住んでるの。大学の友達のトコに居候してる」

同居人がいる事を匂わせて、さりげなく牽制しておく。

桜井にそんなつもりは毛頭ないと思うけど、一応ね。

…しかし、どうしたものか。

「羽瀬」の表札が掛かった家の前で降りたら桜井に同居がバレてしまう。

グラングランと揺れる脳で必死に回避策を考える。

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