イジワル同居人は御曹司!?
その台詞、お前が言うかぁ？

私の中の自制心がガラガラと音を立てて崩れていく。

「だから奏さんには言われたくない！」

私は声を張って睨み着ける。

反抗的な私の態度に奏さんは一瞬面食らった様子だ。

「自分だって無断で夜遅くなってんじゃん！夕飯食べてんじゃん！外泊してるじゃん！」

「其れは仕事なんだから仕方ないだろ」

はいはいはい、出ました男の常套句「仕事だから」。

其れを言えばなんでも許される免罪符だと思ってる。

「大手クライアントの案件がひと段落して暇だって小泉さんから聞いた」

思わぬ反撃に奏さんはウッと言葉を詰まらせた。

「折角作った夕飯は食べきれなくって、結局ゴミ箱行き」

私は再びカツカツヒールを鳴らし歩き始めた。

「其れは家賃代わりのお前の仕事だろ？仕方ないじゃないか」

「家事も仕事！キスも仕事！外泊も仕事！仕事ばっかでもうウンザリ！たまには違った言い訳してみんかいっ！」

急にぶち切れた私を見て奏さんはポカンとしている。

頭に血が上り、クラリと眩暈がする。

段々酷くなってきて、徐々に目の前が暗くなり額に薄っすら汗が浮かぶ。

私はその場にしゃがみ込んだ。

「お、おい大丈夫か？紗英」

奏さんは遠慮がちに声を掛けてくる。

うーん、ダメかもしれない…。
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