イジワル同居人は御曹司!?
食事が終わった後、歯磨きを済ませてデスクへ戻る。

「山下、資料の用意は出来てる？」

「はい、コピーをとってあちらに」

山下は空いたデスクの上に積み上げられた書面を手のひらで指し示す。

「ありがとう」

私は資料を一部手に取ると何の気なしに内容を確認する。

「っげ…」

その瞬間、顔に縦線が入った。

「これ修正前のデータじゃない？！」

山下は慌てて駆け寄り資料を覗き込む。

「…げ」

次の瞬間、山下の顔にも縦線が入った。

「すいません…共有ファイルのデータをプリントアウトしてました」

「修正データは？」

「僕のデスクトップです」

「なに新入社員みたいなミスしてんのよ！」

「すみませーん、藤田さぁん」

アラサー男に泣きつかれても全然可愛くないし。

時計に目を向けると13:10。

資料はA3サイズで1部につき3枚程度だ。

しかし結構な規模の会議なので20部は用意しなければならない。

出力し直して、ホチキス留めしていたら、間に合うか微妙なとこね。

「口頭で訂正しますか？」

「外部の人もいるのにそんなみっともないこと出来るわけないでしょ？！」

山下の舐めた提案に私は般若の顔になる。
< 19 / 328 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop