イジワル同居人は御曹司!?

9. 兄の告白

「おはよう」

奏さんがキッチンに姿を現す。

今日もストライプの入ったチャコールグレイのスーツをバシっと着こなし、ふんわりとした茶色い髪の毛は後ろに流して形のよい額を出している。

やだ…もんの凄く素敵…どうしよう。

自分の気持ちを受け入れた今、見慣れたはずのお仕事スタイルでも、いつもの10倍増しくらい素敵に見えるのだから不思議だ。

「…おはようございます」

私がジッと見つめていると「なに？」と奏さんは居心地悪そうに眉根を寄せる。

「あ！いや、今日も素敵な眼鏡ですね！」

見惚れていたのを誤魔化すために咄嗟におかしな事を口走る。

「何だそれ、馬鹿にしてんのか」

奏さんは素っ気なく言うとバサリと新聞を広げる。

ああ…朝から早速墓穴を掘ってしまった…。