イジワル同居人は御曹司!?
「さり気なく紗英からも兄に探りを入れてみてよ」

「わ、わかった…」

私はもそもそとアラビアータを食べる。

「あ!そうそう」

何かを思いだしたようで、歩はハッと顔を上げる。

「紗英、お願いがあるの」

歩は小首を傾げ、手のひらを重ねながら漆黒の瞳で私をジッと見つめた。

こんな可愛らしくお願いされたら絶対断れない。


◆◇◆◇◆◇

「ごめんねえ、沙英、お休みの日に付き合わせちゃって」

「ううん!歩の結婚式のお手伝いが出来るなんて嬉しいよ!」

「…おい」

不機嫌な声がカットインしてくる。

「真っ先にその台詞は俺に言え」

奏さんは不機嫌全開で愛車のハンドルを握る。

今日は歩のウェディングドレスを選ぶため、私たが同伴者として借り出さた。

奏さんは完全に足扱いだけど。

「そもそも俊くんはどうしたんだ?俊くんは」

俊(しゅん)くんとは歩の婚約者である。

先日ファミリーで食事会があったらしく、奏さんは面識があるみたい。

「ドレス姿は当日お披露目するもんでしょ?」

「本当野暮なこと言いますねー」

私達は後部座席に並んで座りながら言う。
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