イジワル同居人は御曹司!?
2人で押し問答していると、通りがかった男性にすれ違い様ぶつかった。

「おっと、失礼」

声の方へ振り向くと、体躯がよく、短髪が似合うスポーツマン風のイケメンだった。

「ごめんなさい」

私の顔はだらしなく緩む。

「いえ」爽やかに微笑むと、男性は試着室の方へと颯爽と歩いて行く。

いいなあ、あんな素敵な花婿。

私はその背中をジッと見つめてしまう。

「おい」

メガネに声を掛けられ我に返る。

「何だよ、その物欲しげな顔は」

「…いや、別に」

図星を言い当てられてギクリとする。

掴まれた腕をグイッと引っ張られ、よろめきながら再びソファーに腰を下ろす。

「同僚といちゃいちゃしてたと思ったら他の男に鼻の下を伸ばして。お前は浮気な女だな」

「そ、そんなんじゃありませんよ！」

奏さんはさりげなくソファーの背もたれに腕を伸ばして近づいてきた。

私の頭に警鐘が鳴り響き、距離をとる。

「俺と一緒にいるのに他の男に見惚れるのは気に入らないな」

奏さんは不機嫌そうにスッと目を細めて私の顎に指を添え上を向かせる。
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