イジワル同居人は御曹司!?
「あ、あゆむ！違うのこれは…」と言いかけた時に「どうかしら」と鈴の音のような声が隣から聞こえてくる。

隣のフィッティングルームに視線を向けるとイケメン花婿の嫁がドレスを着て姿を現した。

「ん…？」

私はジッと目を凝らす。

イケメン花婿の嫁がどれほどいい女かをよく見ようとした訳ではない。

何処か見た事があるような…。

ふんわりと長い髪を掻き上げた瞬間「ッゲ！」と思わず声を上げた。

奏さんと歩も同時に振り返る。

そこにいたのは、純白のウェディングドレスに身を包んだまさかの優梨奈。

私達に気がついた優梨奈は引き攣った表情で呆然と此方を見つめている。

そして皮肉な事に優梨奈のウェディングドレスは歩と全く同じデザインだった。

か、被っちゃった…。

泣きっ面に蜂、とはまさにこの事だ。

人形のように可愛らしい優梨奈

雑誌から抜け出て来たようにスタイリッシュな歩

うーん…どちらも遜色つかないくらいよく似合っている。

「紗英！どうゆう事？！」

なぁんて言ってる場合じゃない。

優梨奈に気が付いたらしく、歩は鬼の形相で私に食って掛かる。

婚約者がいることを隠していたけどすっかりバレてしまったようだ。

「いや…あの、詳しい事情はまた後で…」奏さんから聞いてね、と心の中で付け足す。
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