イジワル同居人は御曹司!?
ロビーの突き当たりにまで来ると、庭園に続くガラスの扉を開けた。

私は外に出てウロウロ歩き回る。

小川の飛び石を渡り、藤棚のトンネルくぐり抜けると、赤く色づく紅葉が立ち並ぶ小径に差し掛かかる。

ふと人の話し声が聞こえてきた。

忍び足で近づいて行くと、ついに奏さんと優梨奈の姿を発見する。

さすが一流ホテルのコンシェルジュ。尋ね人まで探しあてるとは。

私は咄嗟に紅葉の木影に身を隠した。

「まさか、こんな格好してる時に奏に会っちゃうなんてね」

「綺麗だよ。とても」

奏さんは薄く微笑みながらいう。

優梨奈は大きな瞳でジッと奏さんを見つめた後に俯いた。

真っ白なウェディングドレスを来た優梨奈

黒のニットと黒のパンツを履き、全身を黒でコーディネートした奏さん

そしてモノトーンの2人を取り囲む燃えるような真っ赤な紅葉

その光景は一対の美しい絵画のようだ。

また美男美女っていうね。

「ちょっと待った!」と乗り込む勇気がみるみるうちに萎んでいく。

「奏はどう思っているの?」

「いい人そうだと思った」

「…そう言う意味じゃないんだけどな」

優梨奈は寂しげに微笑む。
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