イジワル同居人は御曹司!?
重い足を引きずり私は家に帰る。

玄関を開けると灯りがついていないので奏さんはまだ帰宅していないようだ。

あの後、気が代わってやっぱり優梨奈の所へ行ったのだろうか。

そう思うと余計憂鬱になる。

私は洗面所で手を洗ってからキッチンに行き、冷蔵庫を空ける。

ミネラルウォーターをグラスに注ぎ一口飲むと、くるりとリビングの方へ振り向く。

暗闇の中でボウッと黒い影が浮かびあがり、ゆらりと動く。

「ブハァ！」

私は水を吹き出し悲鳴を上げた。

「電気くらいつけたらどうですか？！」

まったく！と眉を顰めて私はズカズカとリビングまで歩いて行き、リモコンで灯りを着ける。

言ってしまった側から、しまった、と思う

こうやって口うるさくしてしまうから奏さんは家に帰って来たくないのかもしれない。

「先に帰ってたんですか？」

ノールックでああ、と呟き、奏さんキーボードを打ち続ける。

1人で勝手に帰っておいて何この態度。

何度も電話を掛けたのにずっと無視されたし。

私はノートパソコンのディスプレイを強制的に閉じた。

「何のつもりだ？」

奏さんは鋭い目つきでギラリと睨みあげる。

いつもならそこでビビるところだけど、今日の私はやさぐれている。

「其れは此方の台詞ですが」

胸の前で腕組みしメガネを見下ろす。
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