イジワル同居人は御曹司!?
「なんでそうゆう方向になるんだろう」

奏さんは長い腕で私をそっと抱きしめると、小さくため息をつく。

「大丈夫だよ。俺は死なない。うちは長寿の家系だし」

「ほ、本当ですか？」私は顔を上げて奏さんを見上げる。

「本当」

涙でぐちゃぐちゃになっている私の顔を見てクスリと微笑む。

「じゃあ問題って何なんですか？教えてくださいよ」

私はスンと鼻を啜る。

「プライベートな問題だから言えない」

「なんでやねん！」

必死なあまり関西弁で突っ込むと奏さんは「ブハ！」っと堪えきれずに吹き出した。

「ごめん、紗英…今はそれしか言えない」

奏さんは私の頭をサラリと撫でる。

謎解きのような理由だけど、どうやら私は振られたらしい。

「いいです。私が勝手に好きになっただけですから」

これ以上泣くまい、と眉間にギュっと力を入れて堪えていると奏さんは目元を和らげる。

「もう優梨奈の所には行かないから」

…だけど、他の人の所には行くかもしれない。

その時側にいたら、果たして私は平静でいられるのだろうか。
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