イジワル同居人は御曹司!?
少し戸惑いながら迎えた当日。

どうしよう、なんつって迷ってた割に新調したスカートを下す。

ウエストの後ろの部分がリボンになっていて裾は動く度にひらりと揺れる。

デザインに一目惚れして衝動買いしてしまった。

上はパフスリーブのニットを合わせる。

そしてメイクも髪もバッチリ、というね。

気合い充分のまま、朝食の支度が整うとキッチンに奏さんが姿を現す。

コーヒーを持っていくと、私の格好を一目見て「飲み会か?」とご指摘を受ける。

「はい。今日は友達と飲みに行ってきます」…嘘ではない。

「俺の夕飯は?」

「適当に外で済ませて来てください」

酷いな、と言って、奏さんはわざとらしく大きく目を見開いた。

「振られた腹いせか?」

相変わらずこういう所はむかつく。

「そうですね。早く他にいい人見つけないと」

私は素っ気なく言い返す。

「俺よりハイスペックな男なんて早々いないぞ?」

奏さんはふんと鼻で笑い、コーヒーを飲む。

「だけど、奏さんより優しくて誠実な人は沢山います。隠し事なんてしないようなね」

奏さんが何かを言い返そうとしたが、行ってきます、と言って逃げるようにキッチンを出て行く。

よし勝った!

心の中でガッツポーズを作り、私は赤い自転車のペダルを軽快に漕いで駅へと向かった。
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