イジワル同居人は御曹司!?
仕事を終わらせデスクを片付けていると「何か落ちましたよ」と部下の小泉から声を掛けられる。

差し出されたのはゴールドのリボンが掛かった焦げ茶の小さな箱。

おっつ…見られたか。

「ありがとう」

俺は動揺をひた隠し、ニッコリと営業スマイルを浮かべる。

「今日は早いですね」

「今週は色々立て込んでたからな」

なぁんて言い訳がましい事を言ってみる。

「今日はクリスマスですしね」

小泉はにっこりと爽やかな笑みを浮かべる。

きっと焦げ茶の箱もプレゼントだとバレているだろう。

クリスマスにプレゼントを買って女の元へ急々と帰るなんて、上司としての威厳がそこなれるので曖昧に笑って誤魔化す。

しかし出来る部下小泉はそれ以上踏み込んだ質問をすることなく「お疲れ様です」と言って自分のデスクへ戻って行った。


色鮮やかなネオンに彩られた町。

行きかう人々は手にチキンやケーキの箱を持って足早へ家路につく。

俺の手にも紗英のお気に入りのタルトが入った箱がしっかりと握られていた。

特に今朝クリスマスの話しには触れていなかったが、きっとプレゼントとタルトをを渡したら単純な紗英は喜ぶに違いない。

リアクションを思い浮べると思わず頬が緩みそうになる。

まさか、この歳でクリスマスムードに乗せられて浮かれるとは思わなかった。
< 253 / 328 >

この作品をシェア

pagetop