イジワル同居人は御曹司!?
「へぇ、出てっちゃったんだ。紗英ちゃん。残念だったねー奏」

優梨奈は大きな目を更に大きく見開いた。

「別に残念でも何でもない。たまたまそうゆう時期じゃなかっただけだ」

久しぶりに優梨奈の家に夕飯を食べに来た。

紗英との約束を破った事になるけど、家出したあいつが悪いのでそこは責められる筋合いはナッシング。

「紗英ちゃんにはきちんと話したの？私達の事」

優梨奈はさり気なく尋ねてくる。

俺は無言で豚の角煮をつつく。

何も話していないことを見抜いて優梨奈は呆れた、というように大きく溜息をつく。

優梨奈は赤坂にある高層マンションの最上階に住んでいる。

通常なら鼻血が出るほど高い家賃を支払わなければいけない高級物件だが、親の所有のため家賃フリーらしい。

帰国して久しぶりに食事に誘われてこの家に訪れてから、ちょくちょく泊りに来るようになった。

とはいっても、再会してから彼女と男女の仲になったことは一度もない。

俺の職場の近くという事もあり、仕事が遅くなった時に、一晩部屋を借りて食事をご馳走になるだけだ。

あとは、紗英の顔を見たくない時にも。

うざったい訳ではない。寧ろ愛おしいとさえ思っている。

疲れている時や、落ち込んだ時、逆に仕事が上手くいって気分が高揚している時に紗英が側にいると、ジジイと変な契約をした手前、困ることもある。

…その、生理的に。
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