イジワル同居人は御曹司!?
そのため一泊一飯の恩義はきちんと支払うようにしている。

優梨奈は「いらない」と言ったけど、俺達の間に一線を引くためのけじめなので俺は頑なに譲らなかった。

しかし結局は、優梨奈に気を持たせていたのだからあまり効果がなかったと言える。

やはりモテる男は大変だ。

「お久しぶりですね、奏さん」

優梨奈の妹である可憐がキッチンに姿を現して、二コリと微笑みながら食卓につく。

「うぃーっす」その後から、アホそうだが下手なアイドルより整った顔をした可憐の彼氏がついてくる。

現在優梨奈は妹とそのアホな彼氏と同居して三人で暮らしている。

アホな彼氏は完全に可憐のヒモだけど番犬くらいにはなってんだろ。

そしてもう一人。

「ミャア」と鳴き声がして、俺の脚に優梨奈の愛猫である茶トラ柄の花子がすり寄ってきた。

優梨奈はジャパニーズボブテールと主張しているが俺にとってはそこいらにいる猫と同じに見える。

花子はヒラリと華麗にジャンプして俺の膝に乗っかる。

フミフミと俺の膝をチェックするように前足で踏み慣らしながら、クルりと回転して俺の膝に丸く蹲る。

「花子は奏が大好きなのねぇ」

優梨奈はクスリと微笑んだ。

「スーツに猫の毛がつくのは嫌なんだ」

だけど、膝から花子を退ける気はない。

花子の首元をコショコショと指でくすぐると心地よさそうに目を細める。
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