イジワル同居人は御曹司!?
エレベーターの扉が閉まると私の目から一気に涙が溢れた。

奏さんは私の物にはなってくれない。

キスもしてくれない。

抱きしめてくれない。

…だったら仕事を頑張ろう。

そうすれば私を見ていてくれる。

途中のフロアで乗って来たおっさん達が、ボロボロ涙を零して泣いている私を見てギョッとした表情を浮かべる。

私は鞄からハンカチを取り出して慌てて涙を拭った。


地上に降り立つと、ガーデンシティを見上げ「よし!」と一人気合を入れる。

そのまま踵を返すと地下鉄の駅へと向かった。

あの寒々しい家に帰るのではなく、オフィスへ戻るために。
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