イジワル同居人は御曹司!?
「ブハァ!」

四階の階段を上り終えるとおっさんのような溜息をつく。

寒々しい部屋はあいかわらず寒々しいまま。

だけど以前より寂しさは感じない。

…というか、寂しい、と感じるだけの余裕が今の私には、ない。

経営会議で「多言語コンテンツ」の承認を得ることに見事成功してから、二次開発も並行して走っているため、激務に追われる日々が続いている。

朝から晩までみっちりと社内外の打合せが詰まっており脳が飽和状態だ。

夕飯は既に済ませてきたので―――とはいってもデスクで食べたおにぎりとサンドウィッチだけど―――余力でお風呂に入る。

お風呂からあがると、濡れた髪の毛のままで畳に置かれたマットレスにドサリと倒れ込んだ。

朝一のミーティングで発表する資料に目を通しておかないとな。

私はゴソゴソと鞄からA4用紙の資料を取り出した。

マットレスの上に腹ばいの姿勢で寝ころびながら読んでいると大きな欠伸が出てしまう。

修正箇所を赤入れしていると途中で文字がぼやけて見えてくる。

瞼が徐々に下がってくると、赤ペンを握りしめたまま私はベッドに突っ伏す。

奏さん、今メチャクチャ頑張ってます。

だから私の事忘れないで。

ちゃんと見ててくださいね。

そのまま意識を手放すと泥のような眠りに落ちて行った。
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