イジワル同居人は御曹司!?
「悪いわね、紗英ちゃん。ブーケまで独り勝ちさせる訳にはいかないから」

栞はフフン、と勝ち誇った笑みを浮かべている。

私は鼻の頭に皺を寄せる。

くっそ!

私はダッシュで奏さんの元へと向かう。

「奏さん!栞が私のブーケを掻っ攫って行ったの!悔しい!許せない!クビにして!」

「西太后か、お前は」

奏さんは呆れたようにスッと目を細める。

だって…!と言って奏さんの腕に纏わりつき駄々をこねる。

「そういう事だったのか…藤田」

不意に声をかけられ振り向く。

礼服に身を包んだ桜井が、大きな目を更に大きく見開き此方を見つめている。

そういえば桜井に私達の事をまだ話していなかった。

「バ…バレた…?」

桜井は何かに気付いたように、アッと小さく声を上げる。

「まさか…藤田が考案したプロジェクトの案件って、全て羽瀬兄…いや、羽瀬室長が?」

桜井は咄嗟に言い直す。

どうやら、私のフィクサーが奏さんだった、って事も気付いちゃったみたい。

私と奏さんは肯定する代わりに、無言で顔を見合わせた。

奏さんが経営戦略推進室長兼常務執行役に就任されると、桜井を広報宣伝部から経営戦略推進室に呼び寄せた。

Web再構築プロジェクトの仕事も一緒に持って。

何だかんだ言いつつも、仕事の面では桜井を買っていたらしい。

「これからは俺が直々に可愛がってやるぞ。桜井」

奏さんは、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
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