イジワル同居人は御曹司!?
可哀想に…

私は桜井に同情の視線を向ける。

奏さんの過剰な愛を押し付けられて、彼もボロボロになるだろう。

結局、私も業務の一部持っていくことを条件に、桜井と共に経営戦略室へ移動となった。

現在、多言語コンテンツの仕事と奏さんの秘書を兼任している。


そんな訳で私達の秘密の関係は、まだまだ絶賛継続中である。

桜井にはバレちったけど。

其処は、権力…いや、奏さんのだだ漏れる愛情でカバーしてもらおう。


「ブーケがなくても、結婚は決まっているんだからいいじゃないか」

奏さんは人混みに紛れて、私の手をそっと握る。

「女心が解らない人ですね」

なんて憎まれ口を叩きながら私は指を絡めて握り返した。

「じゃあ、今晩たっぷり教えてくれ」

奏さんが耳元で囁くと、私は仄かに頬を赤く染めて俯く。

これからも、この人の手のひらでくるくると踊らされていくのだろう。

…願わくば一生。



澄み渡った空に響き渡る鐘の音を聞きながら、私達は隠れてキスをした。





END
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