イジワル同居人は御曹司!?
しかし予想と反して形のよい唇は私の顔を掠めていく。

そのまま肩に小さな頭がちょこんと乗っかった。

「腹減った。何か作って」

「…へ?」


数十分後

ナポリタンとサラダ、インスタントのスープがテーブルに並ぶ。

「すみません、あり合わせのもので作ったのでロクなものじゃないんですけど」

奏さんは無表情のまま黙々とナポリタンを口へ運ぶ。

「あの…夕飯は食べたんですか?」

「食べてない」

「それで真夜中まで仕事してたんですか」

無視して奏さんはナポリタンを食べ続ける。

図星か。

完全にワーカーホリックのようだ。

私はテーブルの向かいに座り、頬づえをつきながら呆れたようにスッと目を細めた。

「さて、と」

ナポリタンを食べ終わり、奏さんはお上品にティッシュで口元を拭った。

「家賃をお金で払えないのであれば、先ほども言った通り藤田さんには身体で払っていただこうと思います」

「あの、その言い方は誤解が生じるのでやめていただけますか」

私は意義申し立てる。

「労働をして家賃を払う訳ですから何も不適切な表現ではないと思いますが」

奏さんは眼鏡を人差し指でくいっと上げる。
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