イジワル同居人は御曹司!?
「まぁまぁ…順調なのかな」

私は曖昧に言葉を濁す。

実兄に召使いのように虐げられているとは歩には言えない。余計心配させるだけだ。

私はカフェラテを一口飲む。

「まぁ、今回は紗英の悲惨な状況に免じて契約に同意するけど、さっさとお金を貯めてあの家を出た方がいいと思うわ」

歩は、ほっそりとした指で書面に印鑑をつく。

「家賃と食費フリーは魅力的かもしれないけど、このまま兄にいいように利用されて婚期を逃すようなことはないようにね」

歩は真っすぐに私を見つめる。
「うん、一刻も早くあの家を出られるよう頑張る」

婚期を逃すどころか、ストレスが溜まって病気になりそうだ。

私は神妙な面持ちで深く頷いた。

◇◆◇◆◇◆

帰る準備をしていると「藤田さん」と、ゆうぽんに声を掛けられる。

「先日お話した例のものです」

ゆうぽんはギャルブランドのデッカい紙袋を差し出す。

受け取って中身を見てみると衣類と思わしき物が何枚か入っていた。

「ええ？！本当にいいの？」

私は潤んだ瞳でゆうぽんを見上げる。

「藤田さんにはいつもお世話になってるんで」ゆうぽんはクールに言い放つ。

家事で秋冬物が燃えてしまい、着るものに困っていたのをボヤいていたら、ゆうぽんが洋服を持ってきてくれると言ってくれた。

最近彼女は断捨離を決意したらしい。

お言葉に甘えたら早速今日持って来てくれたようだ。

「ありがとう！早速明日着てくるね！」

私は満面の笑みを浮かべる。
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