イジワル同居人は御曹司!?
「アクセスログ?」

私がきょとんとした表情を浮かべると奏さんの目が俄かに鋭くなる。

「アクセスログとはいつ?誰が?どれくらい来て?どんなページを?どんな遷移で?どれくらい見て?どうなかったか?というWebサーバ上の動作の記録だ」

へえー、と感心したように言うと奏さんにギロリと睨まれた。

こ、怖い…。

「サイトの管理者のくせのそんな事も知らないのか?」

「私がデータマーケティング部に配属になったのは今期からなんです。それに管理者って言っても名ばかりで、仕事の押し付け合いに負けたデータマーケティング部が所管部になったってだけですから」

「頭痛がしてくる」

奏さんは額を抑えた。

「仕方ないですよ。うちの会社の実態は営業部隊が経費と権力握ってるんで。まあ、実質収益を出しているのも彼らなので」

私はてへっと笑う。

「おい」

奏さんが不機嫌な声でカットインしてくる。

「10億だぞ?じゅうおくえん。其れがお前らヘッポコチームに課せられた数字なんだぞ?」

へ…ヘッポコ?なんて失礼なの!

あの爽やかな笑顔の下ではそんな風に思ってたなんて。

これは詐欺の領域だ。

私は顔を紅潮させて憤慨するが奏さんはどこ吹く風だ。

澄ました顔で魚を食べる。

「社内でのヒエラルキーはさておき、来週までにサイトログを用意しとけよ」

「ど、どうやってそのログとやらを抽出するのでしょうか」

私は恐る恐る尋ねる。
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