イジワル同居人は御曹司!?
「ただし条件が一つだけあるの」と歩は付け加える。

「何なに?」

やっぱり上手い話には裏があるのか。

この状況においては条件が1つや2つあっても構わない。

「二階にある南側の部屋には絶対入らないで」

歩はお釈迦様顔から一転、真剣な表情でジッと私の目を見つめる。

「わかった」

その迫力に圧倒され理由も尋ねることなく私は承諾する。

そんなどうでもいい事を尋ねて幸運な話がオシャカになってはたまらない。

「じゃあ、よろしくね。大家さん(仮)」

歩はにっこりとほほ笑みながら左手を差し出す。

その華奢な手を私はしっかりと握り返した。

これで交渉成立。
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