イジワル同居人は御曹司!?
「それで？」

向かいに座った男は頬づえをつき、鋭い視線でこちらを見据える。

私がこの家で生活するようになった経緯を簡単に掻い摘んで説明した。

「私は怪しいものではございません」

男は胸ポケットからスマートフォンを取りだしどこかへ電話をかける。

「歩ならきっと出ませんよ。私も何回も電話しました」

男は意見する私が気に障ったのか不愉快そうに目を細める。

「歩に連絡が付かず君の身元の確認が取れない限り、この家に置いておくことは出来ない」

冷酷にも私を家から追い出そうとする。

「そんな！殺生な！」私はショックで大きく目を見開く。

「そもそも、貴方だって歩のお兄さんかどうか私からすれば怪しいもんです！兄弟の話なんて一度も聞いたことなんてないですしね！」

「それは、本気で言ってるのか？」

…うそだ。

目の前にいるこの男は歩と瓜二つ。

眼鏡の奥の涼しげな目元にスラリと通った高い鼻、薄く形の整った唇。

唯一異なる点といえば、歩の美しいストレートの黒髪とは対象的に、目の前の男性の少し長めの茶色い髪はふんわりウェーブがかっている。

しかしながら、近寄りがたい美形オーラまでそっくり。

歩はこんな無愛想じゃないけどね。

最初はクールビューティーで近寄りがたかったけど、話してみるととても優しくて人懐っこい性格だ。

しかし歩の兄だと主張する目の前の男は、その怜悧な容姿と合い入れた冷酷な性格のようだ。
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