イジワル同居人は御曹司!?
私は渋々隣に腰を下ろす。

「そうゆうの強要してくるのってセクハラの類に該当しませんか?」

「何処がだ?全く一切身体に触れない。そうやって深読みすること自体セクハラなんじゃないか?」

くそ…酔っ払ってても口の減らない男だ。

「わかりましたよ…」

私は固く結ばれたネクタイの結び目を指先で解いていき、スルリと襟元から抜き取る。

キッチリ留められたYシャツのボタンを外していくと奏さんのスラリと伸びた首が覗く。

ただそれだけなのに、何だか色っぽい行為のような気がしてドキドキしてしまう。

奏さんは私の頬にそっと手を添えると「本物だ」と言って、満足そうに目を細めた。

なんでそんな嬉しそうな顔してるのよ。

目が合うと、動揺を見透かしたように奏さんはクスリと笑う。悪趣味だ。

真っ赤になった顔を見られたくなくて、慌てて視線をそらした。

「…ん?」

その瞬間、Yシャツに赤い汚れがついているのが目に入る。

それが何の汚れなのかわからないほど私もおぼこくない。

私が指先でそっと触れると奏さんはくすぐったそうに身を捩る。

「赤いグロスがYシャツに着いてますよ?」

「え?」

奏さんはギョッと目を見開くと慌てて胸元に視線を落す。
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