イジワル同居人は御曹司!?
近くでよく見れば唇も薄っすら紅く色づきラメで光ってる。

何をしてたか一目瞭然。

「唇にもべったり」

慌てて手の甲で口元を拭う奏さんを見て私は失笑する。

「酔っ払って、真夜中に女性を連れ込むなんて最低ですね」

「いや、違う。これは事故だ。交通事故」

奏さんはキッパリ言ってのける。

「私がいるのにもかかわらず一つ屋根の下で何しようとしてたんですか!非常識にも程があります!」

私は眉を吊り上げて怒るが、その様子をキョトンとした表情で奏さんは眺めている。

「沙英はヤキモチ焼いてるのか?」

「違うわ!」

奏さんの見当外れの見解に思わずタメ口で突っ込んでしまう。

「私だって無料でここに住んでいる訳じゃありません!きちんと労働をして家賃を支払ってるんです!見知らぬ人を生活の場に連れ込まれた挙句、安眠を妨害されたんですから意義申し立てる権利があります!」

一気に捲し立てて大きく肩で息をつく。

「理屈くさいな、お前は」

奏さんはふう、と小さくため息をつく。

理屈くさいとかお前が言うな!

「逆に私が男を連れ込んだら嫌でしょう?」

「そんな相手いないだろ」

奏さんはフンと鼻で笑う。

仰る通り。

私は言い返す言葉がなくプルプル震える。
< 79 / 328 >

この作品をシェア

pagetop