イジワル同居人は御曹司!?
「いますよ?家賃も食費もフリーですから。行く当てのない私にとってはうってつけじゃないですか」

私は自嘲気味に笑う。

「昨日は出過ぎた事を言ってすみませんでした」

私は頭を下げる。

急に手のひらを返したような私の態度に奏さんは目を細め訝しげな視線を向ける。

「奏さんのプライベートについては今後一切干渉しないようにします。女でも男でも好きなだけ連れ込んでください」

「男には興味がない」

奏さんの突っ込みも、そうなんですか、とにっこり張り付いたような笑顔で交わす。

「まあ、いい。だけど、お前が同じ事をすれば追いだすからな」

「安心してください。そんな恥知らずな事は絶対にしませんから」

「おい…」

奏さんが何か言いかけたが、掃除機のスイッチを強に入れてシャットアウトする。

奏さんはムッとした表情を浮かべ口を噤む。

よし、勝った。

心の中でガッツポーズを作る


私は考えた。

今迄、上手くやって行くために奏さんと歩み寄ろうとしたのが間違いだったんだ。

奏さんと同居していくのために一番大事なのは「仲良くなること」じゃない。

「関わらないこと」だ。

そうすれば、心穏やかな生活を送る事が出来る。
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