イジワル同居人は御曹司!?
奏さんは身体を引き離すと奥に止めてある自転車を近くまで持ってきた。

「見ろ、自転車にも傷が付いている」

車と自転車を並べると傷の付いている高さがピタッと一致しているのがよくわかる。

「コレでもシラを切るつもりか？！」

奏さんは鬼刑事の如く私に詰め寄る。

「よくわかりません。私がやったのかもしれませんが気がつきませんでした」

追い詰められた私は小学生のような言い逃れをする。

「証拠は揃っている。嘘を付いても無駄だ。傷の修理代は請求させてもらうからな」

奏さんは冷たく言い放つ。

「えええ！そんなあ！殺生な！」

私はショックで大きく目を見開いた。

「領収書は藤田で取っておくから」

奏さんは自転車を奥にしまい、車に乗り込もうとする。

私は咄嗟に奏さんの袖をギュッと掴んで引き止める。

「ごめんなさい、ワザとじゃないの」

私は目を潤ませて上目遣いで奏さんを見上げる。

所謂泣き落としである。

「可愛くない。却下」

「はああああ？！何それ！」

奏さんは私の腕を無下に振り払う。

勝ち誇ったようにふふん、と笑い車に乗り込んだ。

「帰ってくんなー！」

私は走り去る車にに向かって、大声で叫んだ。


その晩、私が眠りにつく前に奏さんが帰ってくることはなかった。
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