イジワル同居人は御曹司!?
「…何か用か?」

夕飯を食べる奏さんの向かいで晩酌する私に怪訝な視線を向ける。

ここのところずっと避けていたので、夕飯にお付き合いするのは久しぶりだ。

「別に」

私は手酌でグラスにビールを継ぎ足す。

少々居心地悪そうに、奏さんは生姜焼きを食べる。

「美味しいですか?」

「ふつう」

「仕事忙しいですか?」

「忙しい」

「ご趣味は?」

「…スポーツ観戦」

あ、今ちょっと考えた。

「じゃあ、スポニチ好きじゃないですか」

「読んだことないからわからない」

「私のことパーティーに誘おうとしていました?」

不意打ちで尋ねると奏さんはギョッとした表情で私を見る。

「何でそれを?」

「いいじゃないですか、なんだって」

私は奏さんの目をジッと見据える。

「小泉か…」ボソリと呟き奏さんは苦々しい表情を浮かべる。

「あいつが何を言ったか知らないが、お前を誘うほど女に困ってない」

奏さんはツンと澄ました顔で言う。

またその顔の憎らしいこと。



< 93 / 328 >

この作品をシェア

pagetop