イジワル同居人は御曹司!?
フロア会議室は空いてなかったのでパーテーションで区切られた打ち合わせスペースにお通して、私と加藤課長で対応する。

「先日いただいたデータを基にログの分析を実施したところ重大な事実が発覚しました」

奏さんはテーブルの上で手を組んで真っすぐに此方を見据える。

「と、いいますと」

私と加藤課長はきょとんとした表情で尋ねる。

「分析するために必要なサーバーのログが詳細まで取得できていません」

「それはシステム不備…ということでしょうか」

加藤課長は想定外の回答に険しい表情を見せる。

「システムを作り込む段階の問題でしょうね」

といことは改修だけで、解決出来る問題ではない、ということだ。

暫し、3人の間に気まずい沈黙が流れる。

「如何ともし難い状況ですね」

加藤課長が腕を組んで重い口を開いた。

「やはり、ログが拾えないと不味いんでしょうか」私が尋ねる。

「そうですね。顧客遷移がどの部分で発生しているかを掴めないと改善のしようがありません」

「此方で大体の当たりをつけて改修していくというのは」

加藤課長が言うと、奏さんは考え込むよう俯きクイッと眼鏡を人差し指であげた。

「失礼します」

声の方へ振り向くと同期の栞が満面の笑みを浮かべて立っていた
< 96 / 328 >

この作品をシェア

pagetop