きみの愛なら疑わない

「ごめんね慶太……美麗は慶太とやり直したい」

「だめです!!」

思わず叫んだ。

「そんなの許されない……」

今更謝っても過去はもう元には戻らない……。

浅野さんも美麗さんも何も言葉を発しなかった。

静寂を破ったのは浅野さんだった。

「二人は知り合いなの?」

先程と同じ質問をした。
一番恐れていた質問を彼はついに私に問う。

「美紗ちゃん話してないの?」

美麗さんも私を見た。

「…………」

「どういうこと?」

浅野さんの目からは怒りと不安と恐れを感じる。

「美紗ちゃんは美麗の友達だよ。結婚式にも出席してくれてた」

「え?」

ついに知られてしまった。最悪の形で。

「うそ……でしょ?」

「…………」

「足立さんはずっと前から僕のことを知ってたの?」

「…………」

「美麗とのことも全部?」

「…………」

彼の問いに何一つ答えられない。だって認めてしまったら全部壊れてしまうから。

「私は……」

「美麗の友達……年齢は下……そうか、君はミサちゃんか……」

「…………」

「さぞ面白かっただろうね。婚約者に裏切られた僕をずっと見てきたのは。今哀れな僕のそばにいるのはどんな気分だ?」

返す言葉がない。何を言っても言い訳にしか聞こえないだろう。
彼のふっくらした唇から出る声は今までにないほど冷たくて、私を見る目は恋人に向けるものじゃない。
私は浅野さんの中で警戒するべき対象になってしまった。

「美麗はさ、今更僕が許すとでも思ってるの?」

今度は美麗さんに怒りの矛先を向けた。過去の浅野さんしか記憶にないだろう美麗さんは、冷たい声と視線に緊張しているのが分かった。

「ごめんなさい……美麗は最低だった……」

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