きみの愛なら疑わない

「姉さん」

「優磨……」

優磨くんは美麗さんに近づくけれど美麗さんは優磨くんから一歩離れた。

「帰ろう」

「慶太に会えたのに帰りたくない」

「今更バカなこと言わないで。そんなこと言う資格は姉さんにはないよ」

浅野さんと同じく優磨くんの声も怒りがこもっている。

「今の慶太さんには姉さんは邪魔なだけだよ」

「どうして? だって慶太は……」

言葉の途中で美麗さんは何かに気づいたように私の顔を見た。

「まさか……そういうこと?」

ゆっくりと私に近づく。

「慶太と美紗ちゃんは付き合ってるの?」

数メートル離れていたはずの美麗さんとの距離はどんどん縮まる。

「もしかしてずっと慶太を?」

「…………」

言葉が出ない。
近づく美麗さんは怒っている。過去にも見たことのない顔で。

「姉さん何言ってるの? 美紗さんを知ってるの?」

「だって美紗ちゃんは美麗の友達だったもん! 慶太と結婚する前から相談してたのに! 匠とのことだって!」

「え?」

優磨くんは驚いた声をあげて、浅野さんは何も言わず無表情で私を見た。美麗さんはもう私の目の前にまで迫ってきた。

「匠に式場の場所を教えたのは美紗ちゃんでしょ!? 妊娠してることも匠にバラして責任感じさせたんでしょ!?」

美麗さんの体は震えている。目の前に立たれると殴られでもしそうなほど、怒りが全身から滲み出ている。
優磨くんも美麗さんの様子に驚いて私に駆け寄る。

「どういうこと? 姉さん妊娠してたの?」

美麗さんは優磨くんを無視して叫んだ。

「優柔不断だった美麗が心を決められるように匠にも決心させてくれたと思ってたのに! 本当は美麗から慶太を奪う目的だったんだ!」

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