きみの愛なら疑わない

違う。違うの。
確かに美麗さんが決心できるように後押しをした。でもそれはみんなの傷を最小限にしたくて……。

「バージンロードを走る美麗と匠を見て美紗ちゃんは笑ってた。あれは美麗が慶太を捨てたから喜んだんでしょ!」

「…………」

チャペルを出ていく美麗さんを心から祝福した。それは本当のことだ。思わず笑ってしまったことも。

「初めから慶太を横取りする気だったのね!」

私に詰め寄る美麗さんを優磨くんが肩を掴んで止めた。

「姉さん! 落ち着いて!」

「美紗ちゃんのせいだ! 匠に捨てられたのも、慶太が美麗に冷たいのも、赤ちゃんが死んじゃったのも!」

「え?」

赤ちゃんが死んだ。
今美麗さんはそう言った?

私だけが驚いたわけではない。この場にいる誰もが絶句して動けなくなった。

「姉さん落ち着いて話してよ。死んだってどういうこと?」

優磨くんは美麗さんを見て、浅野さんを見て、最後に私が疑問に答えてくれるのではと視線を向けた。

「美麗と慶太の赤ちゃん……産まれた瞬間に死んじゃった……」

美麗さんの目からはポロポロと涙が落ちて地面に染み込んだ。

私は寒気がした。美麗さんは自分が不幸のどん底だと全身でアピールしていた。

「浅野さんの子じゃありませんよ」

私は静かに言い放った。

「避妊しないでセックスしてたんだから匠の子ですよ」

自分でも驚くほど静かで怒りのこもった声だった。

「慶太の赤ちゃんなの!」

「違いますよ」

「茶番は終わりだ」

口を挟まず黙っていた浅野さんは静かに言い放った。

「たとえ子供ができて僕の子だったとしても、美麗が僕の前から消えたという過去は変わらないよ」

「…………」

興奮していた美麗さんは言い返すことができずに黙った。

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