きみの愛なら疑わない
「どうして結婚の邪魔をしたの? どうして僕に近づいたの? ……なんて、聞いたら答えてくれる?」
「一言じゃ答えられません……」
美麗さんのワガママが耐えられなかった。浮気相手の子供を浅野さんの子供として育てようとする非情さが許せなかった。浅野さんが傷つくのを想像したら胸が苦しくなった。
ほんのすこしの『不快』の積み重ね。私の勝手な心情から軽率な行動をしてしまった。
「こんなことになるなんて思わなかった……」
結果私が浅野さんを傷つけた。人生を滅茶苦茶にしてしまった。
「よく分からないんだけど、あの男は君が連れてきたの?」
「っ……はい……」
浅野さんの言葉に目が潤み始める。
「ごめんなさい……」
心からの謝罪。本当はもっと早く言うべきだった言葉。
「悪かったと思ってるんだ?」
「はい……」
「じゃあ僕を好きだと言ったのは罪滅ぼし?」
「え?」
「僕に好きだと言えば過去の罪がなくなると思った? 美麗の代わりに慰めてあげようってこと?」
「そんなんじゃありません!」
それは絶対に違う。そんな理由で好きにならない。そんなことで気持ちを伝えない。体の繋がりを求めたりしない。
「過去は関係ありません! 浅野さん自身を好きになったから!」
私は必死に叫んだ。
「あの時はあのまま美麗さんと結婚したら浅野さんが傷つくと思って!」
「なら僕が可哀想だって同情した気持ちを好きだと勘違いしたのかもね」
「信じてください……この気持ちは同情なんかじゃない」
私は何度浅野さんに疑われて弁明してきたのだろう。
「信じる、ね……」
浅野さんは下を向いてわざとらしく「ははっ」と笑った。