きみの愛なら疑わない

「ちょっと無理かも。足立さんを信じるの」

その言葉に私の体は凍りついたように動かなくなった。

「結婚を壊した男と同じ会社になんてよく来たね。僕に恨みでもあるの?」

「違います! 本当に偶然です!」

知っていたら入社しなかった。自分が傷つけた人の今を見るのは辛かった。

「今日まで黙ってるなんて悪意があるとしか思えないんだけど。全部うまくやれると思ってた?」

「違っ、違います……」

「美麗と結婚したら僕が傷つくと思ったのなら、美麗の浮気を君は咎めなかったの? あんなやり方でしかだめだった?」

「っ……」

匠を式場に乗り込ませることが最良だったかと問われたら言い返す言葉がない。

もっと美麗さんを説得できたのではないだろうか。美麗さんのご家族に話をすることもできたんじゃ? 当時の浅野さんに連絡を取って当事者だけで話し合えば大事にならずに済んだのではなかったか?
美麗さんへの妬みで冷静な判断ができないと自覚するのが遅かった。

「美麗とあの男と、君のせいで僕の人生は変わってしまった」

体が震えてきた。
浅野さんを傷つけたことは自覚していた。けれど本人に面と向かって責められて後悔で押しつぶされそうだ。

「美麗に捨てられた僕は愛だの恋だのがバカらしくなっちゃって、いらない感情だって思ってた。でも足立さんとなら前に進めると思ったんだ。君が僕に向けてくれる真っ直ぐな気持ちが嬉しかったから……」

私も変わっていく浅野さんの新しい一面が見られて嬉しかった。
女の人に不誠実な付き合い方をする浅野さんは見ていられない。私が何とかしてあげたいと思ったのに。

「君の気持ちが苦しい。僕はもう君のそばでは笑えないかもしれない」

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